これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門

文化人類学
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感想

文化人類学って何するの?というところから、世界で話題になっているトピックまでが、初心者にもわかりやすいようにまとめられてた。第6章は自由に書く内容だったのでメモは取らなかったけど、とても感銘を受けた。

第1章 文化人類学とは何か

  • ポストヒューマン:今の時点で現存する人間が存在しない時代の地球の住民(人間以外)。10万年後くらいとすると、今生きている人達はポストヒューマンには到達しないと考えられる。
  • 今から10万年前は我々の祖先がアフリカの外に出始めたところ。ネアンデルタール人とかがまだいる。→10万年もあとのことは予測できない。
  • 映画「100,000年後の安全」:実在する核物質の廃棄施設を題材にしたドキュメンタリー。この施設は10万年かけて核を廃棄するようになっているが、10万年後のポストヒューマンがちゃんと廃棄してくれるかどうかもわからない、というどうしようもなく深い問題提起をしている。

#人類学者 クロード・レヴィ=ストロース

  • 「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」。核廃棄の問題は、人間のタイムスケールを超える地球規模の時間の中で存在する。
  • 文化人類学は、そのような世界の成り立ちを視野に入れながら、この人間存在というものを考察していく学問なのだと思う。地球規模の時間軸を念頭に置きつつ、ここ百年くらいの地球上の変化の上に生み出された多種多様な人間の姿や、多種多様な文化を持つ人間の変形を超え、考える学問。

#映画 トゥルーマン・ショー

  • 幸せに暮らしているトゥルーマンだが、実は全部テレビのセットで周囲の人もエキストラだった、というオチ。
  • 文化は、トゥルーマンが経験している日常のようなもの。生まれ育った場所で、私たちは日常そのものを疑うことなく暮らし続けている。

#マリノフスキ

  • 以降、文化人類学者は世界中に散らばってフィールドワークを行い、民族誌を描くようになった。
  • これらの民族誌を読むと、異文化の人たちの社会生活がどう行われ、それらにどのような意味があるのかがわかる。「インセスト・タブー」だけは多くの文化で禁止されている。社会構造は骨組み、感じ方や考え方は血肉(マリノフスキの考え方)。

#ティム・インゴルド

  • フィールドにおける課題を再び引っ張り出した人。インゴルド「文化人類学とは、◯◯について”何か”を学ぶ学問ではなく、人々と”ともに”学ぶ学問」。

第2章 性とは何か

  • 性の問題は、生物としてのヒトと文化的な存在としての人間の両者をまたがって広がる奥深いテーマであり、#人類学 はそもそもこの両者をカバーしながら人間というものを全体的に考える学問として始まった。
  • 時間によって無性生殖と有性生殖が現れ、有性生殖は遺伝子的に繁殖する性質を持っている。
  • 日本の霊長類学はサルの研究で水準が高いことで知られる。#杉山幸丸 はインドのラングールが行う子殺しについて、動物行動学的に分析した(ラングールは一夫多妻のハーレムを築き、別のオスにハーレムを乗っ取られると子殺しが起こる)。
  • ボノボの研究から、ライオンやゴリラなどハーレムを形成する他の動物についても子殺しを行う種が存在することがわかった。ボノボのようにハーレムではなく乱行的な集団を形成する種では、結果的に父親が誰か特定できなくなることで子殺しを回避しているという仮説が唱えられている。
  • ボノボは同性間での性的行為が普通で、これは対立を解消する社会的な機能も有する。
  • ヒトはボノボと同じく、男女のペアを確定させることで一夫一婦的に繋がり、父親が誰であるかを明確にすることで子殺しを防いでいるという仮説がある(#ドゥ・ヴァール)。
  • 人生の中で、ホモセクシュアル→バイセクシュアル→ヘテロセクシュアルと時期によって流動的にセクシュアルが変動する文化に生きる児童もいる。
  • 人間の性は、生物進化的な凝縮ではなく進化していく性から大きく逸脱し、比較的文化的な情緒において多様な性の文化を開花させてきた。
  • 5つもジェンダーがある社会がある→ブギス社会。
  • シャーマン的な立ち位置の人が異性具有する慣習はよくある。

第3章 経済と共同体

  • お金=労働の対価(労働と交換するもの)。お金を使って購入(商品と交換するもの)。贈り物をしてお返しをもらうのは「贈与」。第1章の媒介関係や贈与関係は、共同体の成立と維持に大きく関わる。
  • 文字の無い先住民の社会では、神話や民話が彼らにとっての世界の成り立ちや物事・現象の起源を含め、世界観を伝える媒介となる。
  • 人間には、生まれながらに「シェアリング」の観念が植え付けられているわけではない。「均等」に分配することに重きを置く社会では、大人から教えられることで個人所有の欲望が抑えられ、後天的にシェアが養われる。
  • 一方、現代日本の文化価値は所有が当たり前に認められる(あれが欲しい、知識を身につけたい、と言ったことに自分だけが手に入れることを許される)ため、より人間として自由な教育に見える。
  • 自由貨幣 #シルビオ・ゲゼル:1週間ごとに1ヶ月程度の有効期限を持つ貨幣。有効期限が過ぎれば0円になる。お金は劣化し、消えないものでもない。
  • お金を1箇所にとどめ続けると、経済の停滞を招く。
  • 思い悩む人ほど、集団の中で値が落ち込んでいく→心の病気や、そもそも一人で悩んでいる人が見出せない。
  • 文化人類学では「ある」べきものの無いところ、逆に不在を経験する。「ない」とか「淡い」のような感覚は、「見出せない」とか「不在」と呼ぶ。
  • 国家を持たないことを、政治学では #アナキズム と呼ぶ。

第4章 宗教とは何か

  • 「ブナの運転手は、目の前に現れた鹿を見立てて咄嗟にアクセルを踏み込んだ」。別の人もリスを見て咄嗟にアクセル、轢き殺してから「おかげだ」と微笑んでポケットに突っ込む→自動車を狩猟道具にしている。
  • 「けちであってはいけない」という理念のもと、一番多く現金を与えてくれた人=一番気前のいい人と評価し、その人物に投票する。彼らの行動理念と照らし合わせるとめちゃくちゃ論理的な判断。個人の所有が経済格差を生む。
  • #マーガレット・ミード:フェミニズムやジェンダーに関する議論で大きな影響を持ったアメリカの人類学者。大学の卒業式で正装することを不思議に感じ、文化人類学を研究する。家に入る時に靴を脱ぐ、そういうことに気持ち良さを覚える。なぜ?→内と外を明確に分けるための必要。この区切りの重要性を強調する。
  • #交換的言語使用:ありがとう、こんにちは、というようなフレーズは、何か特殊な意味や情報を伝達するためではなく、相手に対して敵意を持たないことを示す形式的な言葉。こうした言葉を持たない言語もある。
  • 現代の人間は四季やカレンダー、時計などを見て時間を認識するが、それらが存在しなかった時代は岩に星を刻んだり太陽の向きで時間を把握していた。時間は未来のように刻まれもの、もっと流動的なもの。人間は、そのような混沌を混沌のまま認識するのが難しい→混乱に区切りを入れることで、認識しやすくしている。それが約束された「彩り」。
  • 区切りがあることで人生に彩りを与える。それによって人生設計や目標を立てることができる→各個人にとっても、文化・社会的にも重要。
  • #コミュニタス:無礼講の場など、儀礼から外れたリミナルな状況(境界状況)にある状態。コミュニタスは非日常の役割を持つ。無礼講の場で過ごした後に戻る日常は、それ以前とは違うものになっている。
  • #シャーマニズム:昔のヨーロッパの人々にとって、非ヨーロッパ的な異文化の関心の中心になる一つの典型だった。
  • #シャーマン:語源は、シベリアで狩猟や牧畜を生業とするツングース系のエヴェンキという人たちの「サマン」という言葉。シャーマンは「トランス」と呼ばれる状態(心理学的には「変性意識状態」「覚醒意識のない状態」とも呼ばれる)に入って、目に見えない世界と交信している。
  • ミラクル・ジャーニー →自閉症の少年がシャーマンと触れ合うことで自閉症の症状が改善していく様子を父親が記録したノンフィクション作品。
  • #アニミズム →人間や動物、石や無生物にも全て霊魂が宿っているとする汎神論的な信仰のあり方。宗教の最も古い形態とみなされている。
  • 「シロアリに食われて小屋が倒れた」という説明は「どのようにして小屋が倒れたか」を説明している=How。「妖術によって小屋が倒れた」という説明は、「なぜこの主、この小屋なのか」を説明している=Why。前者は科学的な根拠を追求する合理性、後者は「なぜ自分が、なぜあの人が」に答えるもう1つの合理性。

第5章 人新世と文化人類学

  • これまで地球史において、現在は1万1700年前に始まる「完新世」という年代にあるとされてきた。一方で、地球温暖化や核廃棄物など、人類の活動が地球環境に大きな影響を及ぼし、その痕跡が地球の地層に刻み始めた。地球は新たな地質時代「#人新世」という時代に入ったのではないか、という議論が盛んに行われている。
  • 「動物は」:クロード・レヴィ=ストロース「考えるのに適している」、マーヴィン・ハリス「食べるのに適している」、ダナ・ハラウェイ「ともに生きるのに適している」。第1章—10万年後は我々人間の代わりにポストヒューマンが地球上に生きる生物となっているかも →現代でも、人間はすでに人間以外の生物(動物など)と一緒に生きている。
  • 「動物などと生きる」という考え方は、人間以外の存在を入れて人間を検討する、あるいは人間と人間以外の存在を同時に検討する学問へと変貌させつつある。このような多種間の絡まり合いを「複数種」の人類学= #マルチスピーシーズ人類学 と呼ぶ。人新世と同様に、人類学のみならずさまざまな分野で使われている現代を表すホットワードの1つ。
  • 1990年代以降の古環境学の研究は、地球の環境変動が地球外からではなく人間の活動によって引き起こされていることを明らかにした。これだけ大きな負荷を地球規模の環境変動に与えていることは現代の人間が初めて。「人新世」は、大規模な地球環境への負荷を負担している人間たちによって2000年代以降に提唱されるようになった。
  • 私たちも知っている世界がどのように「ある」のかという存在論的な問い → #人新世の存在論的転回 と呼ぶ。
  • ブナの神話:「文化」から「自然」が生まれたという考え方 →複数種によって世界が生まれているかもしれない →現代社会では、「自然」は単純に現実として在り、その上で人間が文化を作り合っているような考え方になりがち。
  • #スペキュラティヴ・デザイン(思弁的デザイン):深刻化する地球環境問題に対してネガティブな影響を及ぼしているデザインの乗り越えを目指したもの。人間と現実との関係性を変動させていく分が役になるとして取り組まれるようになった。
  • 石器時代に石の包丁を使うようになった人類は、道具に合わせて手の形が変わると言われている →人間が包丁をデザインし、包丁によって人間がデザインし返された例。
  • 2021年に雑誌「WIRED」は「2050年に向けてどんな社会変化が起こるのか」を分析した。そこでは以下の4つがコンセプトとして選ばれている:「ホモ・ディヴィデュアル」「コンヴィヴィアルAI」「ウェルビーイング・ウィズ」「マルチスピーシーズ」。
  • これまで「考えるのに適している」「食べるのに適している」のように人間世界の外部に位置付けられてきた動物が、「ともに生きていた」と捉え直されている。